そうこうしているうちにいつの間にか練習場へ辿り着いていた。

練習場は地下にあり、そして、その中でも1番大きい第1練習場の中で魔力測定と、召喚獣の登録が行われるようだ。

まず、魔力測定が行われるらしい。
_____________________side.Lily

まったくもう……。

移動中も私達は好奇の視線に晒され続けた。
その視線の内訳はラルは憧れと少しの下心、
私は嫉妬と少しの興味、だった。

そう言えば、私達の他にも注目を集めている人がいたなぁ。誰だろう?

「次は桜花様お願いします。」

!?

そっか、そう言えば桜花も私と同い年だったっけ。ってことは、注目を集めてたのは桜花と桜“蘭”かな?

懐かしいなぁ〜。いつぶりだろう?

桜花はこの砂時計の星の反対側、
『華ノ国』を治める桜家のお姫様。

(リリー達が住んでいるのは『アルブレヒト王国』で、アルブレヒト王国国立学園は砂時計の真ん中のくびれ部分に存在する、次元の狭間のなかにある。)

華の国とアルブレヒト王国は昔から交流があり、その為、桜花とは小さい頃に会ったことがあるんだ。

「桜花ってどれ位強いんだろう?」

小さな頃だったから戦ったこととかないんだよね〜。

「ん?そこそこに強いんじゃないかな?じゃなきゃ、あの頃のリリーには近づけないでしょ?」

「それもそうだね。」

お、あれが桜花かな?

……。

可愛い。

薄い桜色のショートボブの髪はふわっふわで瞳の色は澄み渡った湖みたいな淡いエメラルドグリーンで、いやもう天使かっ!って言うくらい可愛い。

って、違う違う。

桜花の魔力量はどれ位なんだろう?

(薬草とかは1〜100マナ。魔法に関わらない一般人が100~1万マナ。貴族や魔法に関わる人は1万~ 10万マナ。王族は大体40万マナくらい。アルブレヒト王国国立学園の平均は30万マナ。)

「只今の桜花様の記録は……!

な、75万マナ!」

___ザワっ……

わぁーお。

はっきり言って、今の桜花の記録は意外だった。どちらかと言えばおっとりした性格の桜花が、そんな高い魔力量を持っているなんて思っていなかったから。

話しかけてみようかな?

「おーい桜花!久しぶり!」

「んぅ?あ、リリー!ラル!久しぶりだね!」

「久しぶり、桜花。桜蘭は?」
.
「ん?誰?そのひと。」

「「!?」」

桜蘭は、桜花の双子の兄で、昔は4人で遊んだこともよくあった……んだけど。
. . . . . .
憶えていない?

「ううん。何でもない。桜花の双子のお兄ちゃんってなんて名前だっけ?忘れちゃった」

「人の事を忘れてしまうなんて酷いわぁ。
リリー、ラル。」

誰?

私達に急に声を掛けてきたのは、空色の髪に銀色の瞳の穏やかそうな顔に人懐っこい笑みを浮かべた男の子だった。
. .
「僕の名前は『桜夜』やで?」


違う。


私は記憶力に自信がある方だけど、私の記憶の中の『桜蘭』は「僕」なんて一人称は使わないし、そもそも、髪は澄み渡った淡いエメラルドグリーンのふわふわの猫っ毛で、目の色は薄い桜色と、桜花と逆のはず。

じゃあ、この目の前にいる奴は誰だ?

何故、桜花は違和感を覚えていない?

「ごめん、ごめんって。」

「もう、しょうがないなぁ、リリーは。」

『次は、桜夜様、お願いします。』

「あ、桜夜呼ばれてるよ?」

「うん。僕はもう行くわ。」

「「「頑張って(ねー!)」」」

「ラル、今のどう思った?(小声)」

「ほぼ百でなんか隠してるな。(小声)」

「やっぱ?桜蘭はどこだろ?(小声)」

「さぁ?でもあいつなら、この中には居るだろうな。(小声)」

「だよね〜。(小声)」

まぁ、桜蘭シスコンだしね。

桜花大好き!!!

ってキラキラと花飛んでたしね。

「只今の桜夜様の記録は……!

……。

きゅ、93万マナ……だと!?」

___ザワザワっ

ほぇ〜。意外。

まぁ、桜花に記憶に関する魔法(難しい)をかけられるくらいなんだから、当たり前っちゃあ当たり前かな?

「お疲れ様でした、兄様(にいさま)。」

「おおきに、桜花。」

「お疲れー……。」

「お疲れ様。……。」


ん〜。

こちらに向けられる殺気が1陣。

まぁ、私に向けられるものならまだ分かるんだけど。

狙いはどうやら桜夜っぽいね。

なーんか、桜蘭っぽい気配を感じるなぁ。
だって、桜花の方向くとあからさまに花飛ばしてるし。

「ラル。あれって……。」
..
「うん。ぽいな。」

『次は、星蘭(せいらん)様お願いします。』

「うん。」

「ん?え、でも名前……」

「本名なんか使ったら目立つでしょ?」

「それもそうか。」

魔力測定器の方に歩いていったのは、顔は、長めの前髪とマスクに隠れて見えなかったけど、髪は海の色を思わせる深い紺の猫っ毛だった。

でも、私はその髪が太陽の光で美しい水色に輝く姿をみてしまった。

そして、風になびいた前髪の向こう側には桜色の虹彩をもつ瞳があった。

「あー、やっぱり。」

「え、でも髪の色違うよな?」

「いや、あれは染めてると思う。」

『只今の星蘭様の記録は……!?

は、86万マナ!?』

___!?

「ん?なんで桜夜よりも記録が少なかったのにこんなザワついてるんだ?」

「んー。そりゃあ、星蘭が庶民だと思われてたからじゃない?それなのに王族よりも魔力量が多かったら誰だって驚くでしょ。」

「なるほど。なら……


どうしてそんなに驚いていらっしゃるのですか?桜夜様?」

「い、いや。思っとったよりも星蘭くんの魔力量が多かったから、ちーっと驚いとっただけやで?もう、からかわないでぇな。ラルが敬語なんか使っとるとなんかゾワッとするんよ。」

「あ、それ分かる。公務の時とかすっごいゾワゾワして気持ち悪いもん。」

「リリー?ちょっとこっち来ようか?(黒笑)」

「あ、はい。すいませんでした。」

そして私達が向かった先は、星蘭こと桜蘭のところだった。
..
「久しぶりだね?桜蘭。」

「!?

……。

まさか、リリー……と、ラル……か?」
...
「おー。久しぶりだな。桜蘭は覚えてたのか。」

「ああ……だが、あまりその名で呼ばないでほしい……今の俺は星蘭…だから。誰かに聞かれたらめんどくさい……」

「おーけー。分かった。でも何があったか位は教えてよ?」

桜蘭はこくり、と頷いた。

「……。

分かった……。でも、ここは…だめ…。誰かに聞かれてるかも知れない……。
あとで…。場所は…また、連絡する……。それで……いい?」

「もちろん。」

「それじゃあ、後でな。」


「なんか、雰囲気変わったね。星蘭。」

「少し、口数が減った気がする。」

「うん。でも、それだけじゃなくて……」

「?」

血の匂いがする。

私達(どうぎょうしゃ)にしか分からないような。

多分、桜蘭は……



今までに人を殺してる。



「??」

「ううん。何でもない。」

ラルは知らなくていい。


ラルには陽の光があたる場所にいつもいて欲しいから。


暗い陰なんて知らなくていい。


ラルは私が護る。

「……。俺には、リリーが何考えてるかなんて全くわかんないけど、

リリーが嘘ついてるってことだけは、
わかる。

余り1人で抱え込むな。

俺を頼ってよ。

リリーには俺がいる。」




「ん。


ラル、ありがとう。」