「…もう10年以上も前の事だよ。」 「…っ…俺…鼻かんでくる…!」 「ははっ、はいよ。ついでに顔も洗ってこいよー?」 冴木君は鼻に限界が来たのか、席を立って事務所に駆け込んで行ってしまった。 私は藤枝さんと向かい合って二人きり―。 こんな展開になってしまったのは私のせい、それに触れちゃいけない所に触れてしまった事への謝罪をしようと口を開いた。 『マスター、あの…!』 「ん?」 『…変な事聞いて…その上、辛い事を…思い出させてしまって…すみません…!』