力無く微笑む藤枝さんの姿を見て心が軋み始める。 そして、不意にある事を思い出した。 元彼に襲われて助けてもらったあの日交わしていた冴木君との会話を。 "松岡さんも心配だけど、マスターも大丈夫…?あの事思い出したりとか―" 冴木君が言ってたあの事って…この事を言ってたんだ…。 「意識が遠退いて行く中、奥さんの叫び声が脳にはうるさい程響いてきて…助けたいのに体は動かない。どうしたら助けられる?誰でも良いから俺の代わりに助けてくれ!って声にならない声で叫んでた。」