「母さんは…金に困ってたんだろうね。
この家売ったから…って言われた。それが新しく移住してくる人達が来る一週間前でさ。
いくら騒いだってあの人は自分の事しか考えてないし…頼れもしないから慌てて荷物整理とか掃除とかして出ていく準備は万端にした。」
凄く悲しい事のはずなのに、冴木君は懐かしむみたいに涼しい顔して言葉を出していく。
だけど多分心の中では泣いてて…口に出すのも辛いはず…。
『お家を出てそれからは…?』
「色々電車やバスを適当に乗り継いで今住んでる街に辿り着いた。」
『何も知らないのに…?お祖母ちゃんの家とかに行こうと思わなかったの?』


