私はゆっくりと目を開けた。


記憶のある限り、全てを思い出していた。


もう記憶が更新されることはないだろう。


私がフェンスに手を掛ける。


腕に全体重を乗せて、飛び越えようとした時、



ガチャン!



突然、屋上のドアが開く音がした。


私はびっくりして、思わず腕の力が抜けてしまった。


そのせいでバランスが崩れ、フェンスの向こう側に傾いた。


ああ、私死ぬんだ。


そう悟って、私は目を閉じた。



「真咲!!」



その時だった。


私の耳に秋の声が聞こえたのは。