1人でそう言い聞かせていると、腕と指が痛くなってきたことに気づく。
そうだ。
私、ノートを運んでいる最中だった。
10分しか休憩時間がないから、早く戻らないと次の授業が始まってしまう。
だんだん痛くなるのをこらえながら、早足で教室に戻った。
✽✽✽
「真咲、遅かったじゃん」
教室に入ると同時に、秋が話しかけてきた。
「ちょっと、先生と話してて…」
紺堂さんに会って秋を返してと言われました、なんて言えるはずがない。
咄嗟に出てきた言葉で誤魔化した。
幸いなことに、ノートを運んでほしいと言ってきた数学の先生は担任だった。


