物心がついたころ、私にはお父さん、お母さんと呼べる人はいなかった。
お母さんは私が産まれてすぐに容態が急変して亡くなり、お父さんは相手の飲酒運転による交通事故に巻き込まれ、意識不明の重体となり帰らぬ人となった、と聞いている。
家族がいなくなってしまった私は親戚の人に引き取られて育てられた。
でも子育てにあまり関心がないのか、何かとめんどくさそうだった。
遠慮がちにわがままを言ってみると、冷たい視線を向けられた。
食卓を一緒に囲んでも会話はない。
それ以外の時もあまり話すことはなく、家の中はとても静かだった。