「左向いて」 そう言われたので、言われた通りに左を向いて体育座りをした。 すると、カチッと音がしてドライヤーが作動した。 秋の指が私の髪に絡む。 「髪の毛、サラサラだな。それにいいにおいする」 私の髪に顔を近づけ、においを嗅ぐ。 「秋と同じにおいでしょ?」 「あんまり嗅がないから分からねぇな」 わしゃわしゃされてると、時々くすぐったい。 「くすぐったい?」 「うん」 「我慢しろよ」 「え」 我慢しろって……ひどい。