「俺ら5時間目だから、昼休みにでも返しに来て」

「了解」

〈いた…〉

窓際前から2番目。本を読んでいる。
綺麗な黒髪は肩の辺りで揃えられ、内巻きの毛先が、開いた窓からの風でなびいている。

「誰見てんの?」

綾人の声に思わず肩がビクッと動く

「えっ⁉︎いや、きょ、教科書ありがとう!昼休み返しにくる!」

「おう」

慌てて走って帰ったおれは綾人のつぶやきに気づかなかった。

「瀧島雛乃か…」