「ど、どうしたの?」

「雛、気づかなかった?」

「え?何に?」

ただ楽しくて演奏に夢中だった私には、何のことかさっぱりわからない。
奏ちゃんは必死に笑いを堪えようと肩を震わせている。

「確かにあれは面白いな。」

「わかりやすすぎるだろ!」

普段あまり表情を崩さない浩くんもニヤけてるし、祐くんにいたっては大爆笑…
奏ちゃんも祐くんにつられて吹き出した。

「え、だから何⁉︎教えてよ〜!」

なんで笑われてるかわからないけど、とにかくものすごく恥ずかしい。

(私なんか変なことしたっけ?)

「あ、あのね、だから、うふふ…」

「もう!」

奏ちゃんは息も絶え絶えだ。

「ごめんごめん。あれ?誰だっけ?」

「那賀燐太郎」

「そうそう!ありがとう浩。那賀ってばライブの間中ずっと雛のことみてたよ!」

「もう釘付けって感じだなあれは♪」

「えっ⁉︎嘘でしょ?」

「いいやあれは完全に雛乃を見ていた」

(全然気づかなかった…)