「…瀧島さん、ちょっといい?」

「何?」

「ここなんだけど…」

雛乃が身を乗り出し、燐太郎の机を覗き込む。首を傾げ、こぼれた横髪を少し鬱陶しそうに耳にかける。

〈やべぇ〉

燐太郎の心臓が暴れ出す。

「……ああ、これは男君が源氏で姫君が紫の上だから、この文は源氏の心の声だよ」

「…あっ、そっか!ありがとう」

「うん!」