駅を通り過ぎしばらくすると、車通りの少ない住宅街に入った。

「そういえば明日からテスト前だよね?おれ、数学は自信あるけど古典苦手なんだよな〜」

「私と逆だね。国語は得意なんだけど、数学が…」

それを聞いた燐太郎は決意の表情を浮かべる。

「…じゃあ一緒に勉強しない?」

「えっ?」

「教え合えるし!もちろん、嫌ならいいんだけど…」

燐太郎は指で頰を掻いている。

(奏ちゃんは塾だし、他に一緒に勉強する約束してる子いないしな…)

「いいよ」

「ほんとに⁉︎じゃあ、どっか空き教室でやろっか」

「うん」

「放課後クラスに迎えに行くよ」

「わかった」

その後も他愛のない話をしながら2人は雛乃の家の前まで歩いた。

「送ってくれてありがとう。」

「おう。じゃあまた明日!」

「また明日!」

燐太郎は雛乃が家に入るのを見届けると、駅に向かって歩き出す。

〈よし!良くやったおれ!〉

(また明日…か。何だか変な感じ)

雛乃は胸の奥がじんわりと温かくなった気がした。