「ちょっと!聞こえてるわよ」
やべ、と言う顔をしておじさんは顔を埋めた。
「あはは、そうなんですか?」
笑いながら梓さんに問うと、「そんなことないわよ」と否定した。
「でも、この前のクッキーは美味しかったです。あれって確か手作りですよね?」
「おかし作りは好きなんだよな?」
おじさんが梓さんに尋ねた。
と言うことは、料理を作るのがあまり好きじゃないってことなんだろう。
あんなに美味しいクッキーを作ったり、ガラス工芸で綺麗なものを作ったりするから、物作りが得意で好きなんだと、勝手に思っていた。
「誰にでも、好き嫌いや、得意不得意くらいあるわよねー?」
同意を求めるように梓さんが聞いてきた。
「ははっ、そうですね」
当たり前だけど、人によって好き嫌いは異なる。
陵にも出来ないこととかあるのかな?
ーあるよね?
だって同じ人間なんだし。
そう考えると、少し心が軽くなった。

