コンコンと2回ノックをしすると、中をから「はーい、どうぞ」という梓さんの声が聞こえた。

「お邪魔します」そう言いながらドアを開けた。

お邪魔します、っていうのも少しへんな気がする。
ここは「失礼します」って言うべきだった?

部屋に入ると、そんなモヤモヤを取り消してくれるようなコーヒーのいい香りした。


「どうぞ、ここ座んな」
部屋にはおじさんもいて、わたしが座れるよう、椅子を引いてくれた。

「ありがとうございます」

わたしは引いてくれた椅子に腰をかけた。


そしてキョロキョロと辺りを見回した。

梓さんは奥のキッチンで準備をしている。

「陵はガラス工房の方にいるんですか?」

「そうそう。こっちが呼び戻さないとずっーと作り続けるような子だからな」

おじさんがいると言うことは、もしかすると陵もいるかも、なんて思ったけど、的外れだった。



「ほんと好きなんですね、ガラス工芸」

ぼそりとそう呟いた。