「いらっしゃいませ」
わたしとの会話を中断させ、お客さんに挨拶をした。
そのまま小声で彼女は続けた。
「ゆっくり見ていってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「もし、また機会があればお話ししましょう」
ニコッと笑顔で言うとレジのあるカウンターの方へと戻っていった。
この前から、彼女と聞かれてばっかり。
そんなに珍しいんだろうか?
陵が女の子を連れていること。
かと言って、わたしも誰か男の子を家に呼んだり、家族や親戚に合わせたりしたら、「彼氏?」とは聞かれそうだけど。
正直、彼女と見られるのは嬉しい。
でも実際は違う。
そう考えると、なんとも言えない複雑な気持ちになった。
それに、陵にわたしは釣り合わない。
今まで、一生懸命生きてきたつもりだけど、それは「つもり」であって、陵を見ていると、本当に自分が情けなく感じた。

