そんなに遠いわけでもないし、駅からも5分くらいしか歩かない。

だから歩いていくほうが、迷惑もかけないし、気が楽。


「その代わり、帰りは車で送るってさ」

「え!?いいよ!」

すぐに断ったが、陵に行っても仕方がない。
送ってもらうのはおじさんだろうから。


ただ、車で送ってもらわないからと言って、この前みたいに陵に送ってもらうのも悪い。


色々お世話になっている分、やっぱり極力迷惑はかけたくない。


そう思う反面、せっかく好意で言ってくれていることなのにあまり断りすぎるのもよくないかな?

そういう思いも頭をよぎる。


そんなことを考えていると、わたしの表情を読み取ったのか、陵が「そんな心配しなくても大丈夫だよ」と優しく囁いた。


「この前だって、俺が送りたいから送ったんだし」

笑顔でそう言う陵にドキッと胸が高鳴った。


「そ、そっか」

思わず目線を逸らしてしまった。

何故か恥ずかしくて陵の顔を見れない。

見てしまうと、全てを見透かされてしまうような、そんな感覚に陥る。


この一瞬で急激に温度が上がった気がした。ものすごく暑い。


勢いに乗った風がわたしたちの間を通り抜け、スカートがふわりと浮いた。

その風は、火照った体や顔を心地よくさせてくれた。