「それ、とんぼ玉っていうんだぜ」
「え?」
「模様がついてるだろ」
陵は手を伸ばし別のガラス玉を手に取った。
「その模様がトンボの複眼に似てるから[とんぼ玉]っつーんだって」
「へー」
模様や色は様々だった。
小さい玉には器用に動物や花の絵が描かれていた。
中には立体で描かれているものもあり思わず見入った。
「すごい技術だね」
全部手作りということは、どれ一つとして同じものがないということ。
そう思うと一つ一つがとても愛おしく思えた。
わたしは一つの商品に目が行きそれを持って眺めていた。
「なに?それ気に入ったの?」
陵が聞いてきた。
「うん」
そう言うと、なぜか少し恥ずかしそうに「そっか」と笑った。
「玉の上に模様を作って、その上からまたクリアガラスを乗せてるんだ。ほら、ちょっと奥行きがあるように見えるだろ」
「見える見える!」
ガラスの美しさが一層増した感じがする。
わたしはそのまま吸い込まれそうなそのとんぼ玉を見つめていた。

