空に虹を描くまで



「かっちゃんから聞いてたの。あ、かっちゃんっていうのはこの店のオーナー兼わたしの旦那さんね」
わたしの手を離さずそのまま続けた。

「陵ちゃんが可愛いガールフレンド連れて来るからおもてなししてあげてって」

「もういいだろ」
陵がわたしの手首を掴み割り込んできた。

そのおかけでわたしの両手はやっと解放された。

「ヤダー!陵ちゃんったらかわいいんだから」
そう言いながら肘でツンツンと陵を突いていた。 

陵は面倒臭そうに肘を払いのけた。

なんだか、この雰囲気さっきのおじさんと似ている。
夫婦って似てくるものなんだろうか?

それとも似た者同士なのかな?

「あ、わたしの名前は梓(あずさ)って言うの。おばさんは禁句よ」
笑顔で口の前で人差し指を立ながら言った。

「はい」
わたしのお母さんも「おばさん」と言われるのを嫌がる。

いつになったら呼んでもよくなるんだろう?
もしかしたら一生なんじゃないか、って時々思う。

梓さんは「ちょっと準備してくる」と言って奥の部屋に入って行った。

運転をしてくれていたおじさんもまだ建物に入ってくる様子はなく、わたしたちはその部屋に取り残された。