学校を出ると、道路の向かい側に1台の黒いミニクーパーが停まっていた。
「あれ、店長の車」
陵の視線の先には、わたしが見ていた車があった。
陵の足は駅とは逆方向の車の方に向いていた。
「え、まさか迎えに来てくれたの?」
「いらないって言ったんだけどな」
わたしが慌てているのとは裏腹にスタスタと歩いて行った。
わざわざ迎えに来てくれたってことだよね?
わたしがいるから?
お世話になるんだから何か手土産とか持ってこればよかった。
思ってもみない展開で一人であたふたしていた。
陵は車の扉を開けて、中にいる人に「お待たせ」と言っている会話が聞こえた。
わたしってば、陵だけでなく店長さんまで待たせていたんだ…。
そう落ち込んでいると、陵がわたしの方を見て「どうぞ」と言ってきた。
扉を押さえてわたしが車に乗るのを待っていた。
「あ、ありがとう」
そのまま駆け込むように車の中に入ると、バタンと扉が閉まる音が聞こえ、反対の扉から陵が乗ってきた。

