「あ、佳奈!」
走っている途中後ろから声が聞こえて急停止した。
「え?由美?」
「もう!前から歩いてきたのに、なんで気づかないのよー」
全然気づかなかった。
教室に向かうのに必死だったんだ。
「ごめんごめん」
「ところで、探してた人には会えたの?知らない人が顔のぞかせてたから、もしかして佳奈が探してる人なんじゃないかと思って、一応待っててって声はかけたんだよ。けど、わたしの言葉を聞く前に走っていっちゃって」
「そうなんだ。でも会えたよ!おかげさまで」
「よかったね」
安心したように言った。
「じゃあ、早く行かないと。待ってくれてるんでしょ?」
そう言いながら由美はわたしの背中を押してきた。
「わわっ」
由美は階段の方までわたしを押してきた。
「楽しんできてね」
最後にポンっと軽くたたいて言った。
「うん!ありがとう」
わたしはお礼を言って階段を駆け下りて行った。

