「なに?噂って」

「こいつ、お前のこと探してたんだって」

海くんはわたしがしゃべり出す前に説明した。

「じゃあ入れ違いだったんだな。俺もちょうど5組に行ってたところ」
そう言って微笑みかけてきた。

その言葉を聞いて安心した。

よかった。
忘れられてたわけじゃなかったんだ。

「一軒落着だな」
そう言って海くんはため息をついた。

「ありがと、助かったよ」
わたしがお礼を言うと海くんは「やれやれ。貸しだかんな」と言って教室を出て行った。


「5組に行ってもいなかったから、帰ったんじゃないかって思ったよ」

「ええ!?帰るわけないよ。わたし楽しみにしてたんだから」

そう言うと、「冗談だよ」って笑いながら言った。

「名前も聞いてなかったし、わたしこそ忘れられてるんじゃないかって思ってた」

「まさか。忘れるわけないだろ」

「わたしだって」

そう言いあい二人で笑った。