結局は、わたしも進学することが当たり前だと思ってたし、返答は大学名が返ってくると思ってた。

それを見事に覆された。


「井上は?」

その言葉を聞いてふっと我に返った。

「え?なに?」

「進路、どうするか決めた?」

「ううん」
首を横に振りながら答えた。

「まだ悩み中」

「そっか」

それ以上聞いてくることはなかった。

かと言って、わたしもそれ以上自分の進路について話すつもりもなかった。

何も思い浮かんでないし、決まってもいないから、話すことなんてないも同然だけど。


「就職って働きたいところあるの?」

わたしは話を戻して聞いてみた。

興味があった。
どうして進学校まで来てわざわざ就職するのか。

ほかの人と違った進路を選ぶ理由が知りたかった。


聞いた瞬間、少し突っ込んで聞きすぎかな?って思った。
だけどそんなわたしの考えとは真逆に、すんなりと答えてくれた。


「ガラス工芸って知ってる?」

「あ、テレビで見たことある。なんか熱で溶かしたりして形作っていくやつでしょ?」

「そう、それ。親父の古くからの友達がガラス工芸やっててよく作ってるんだ」