「え?なんで?大学行かないの?就職って高校卒業したら社会人になるってことだよね?」

「まあ、そうだな」
何当たり前のこと言ってんだ、とでもいうように彼は楽しそうに笑いながら答えた。


わたしはじーっとその人の顔を見た。


「な、なんだよ」

「もしかして、わたしのことからかってる?」

「はぁ?なんでそうなんだよ」

「分かんないけど…」

「なんだそれ」


…本当に就職しようと考えているんだ。

出合ったばかりの人に答えたくないからはぐらかされたのかと思って聞いてみたけど、嘘をついているようには見えない。


そう思った途端、大きな闇に引きずり込まれたかのような暗い気持ちになった。

ほかの表現で表すなら、今日は一日晴れだと思って傘も持たずに家を出たのに、激しい雷雨にあって、結局遊べず雨に濡れて寒い思いをして一日を無駄にしてしまったようなそんな気持ち。