再び低い振動音がこの静かな空間に鳴り響いた。
陵は慌ててスマホを取り出すと、「やべ」と小さく吐いた。
「俺、戻るわ」
「あ、うん」
陵は布に手をかけた。
「明日頑張れよ」
帰り際に振り返って笑顔で言うと、そのまま行ってしまった。
「はぁー」
わたしは深くため息をつきながら、ズルズルと座り込んだ。
何が起こったのだろう。
そう考えるも、頭の中でリピートできるほどの余力は残っていない。
それにあの笑顔。
陵はなにも考えていないのかもしれないけど、わたしにとっては鋭い武器ほどの力がある。
それでもって、きっと、何よりも効く妙薬だ。
力が出るし、わたしも頑張ろうと思わせてくれる。
本当に不思議なものだ。

