もう立つ気にもなれない。
というか足に力が入らない。
教室といえども、暗闇で周りは黒い布に奇妙なものがたくさん置いてある。
唯一の救いは、周りから聞こえてくる賑やかな声だった。
「あ、いるよ。さっき驚かせたところだから。こっち」
由美の声が聞こえるな、と思ったら布と布の間から人影が見えた。
「ありがとう」
その声にはっと目を見開いた。
「すげーな」
辺りを見渡しながら陵が入ってきた。
「陵!」
「よくできてるな」
そう言いながらわたしの隣に座り込んだ。
「お化け屋敷やるんだ」
「そうなの。陵のところは何やるの?」
「ピタゴラスイッチ。つっても展示するだけだけど」
「へー、面白そうだね。明日見にいくよ」
「サンキュー。あとさ…佳奈子のバンド演奏する時間っていつ?」
「えっと、14時からやるの。体育館で。あ!暇なら見に来てよ!」
「俺も空いてたら行こうと思って聞きに来た」
笑いながら陵が言った。
それを聞くために来てくれたんだ。
そう思うと、嬉しくて顔が熱くなる。

