勝手にわたしが陵はいつも明るい、なんて思い込んでいただけかもしれないけど。
どこか落ち込んでいるというか、元気がないように見えた。
「あ!そうだ。わたし実は文化祭までだけど部活に入ったの」
「文化祭まで?」
「そう。軽音楽部に…!」
改札の少し手前で話し込んでいたから、出てくる人とぶつかり体がよろけた。
「わ…っと」
少し足がばたついたが、すぐにピタリ安定した。
「平気?」
そう言われ顔を上げると目の前に陵の顔があった。
背中には陵の腕が密着している。
わたしはアンバランスな体勢のまま陵にもたれかかっていた。
わたしが倒れないように支えてくれた、と理解すると顔が火照ってくるのが自分でもわかった
。
「ご、ごめん…ありがとう」
ぎこちなくお礼を言うと、そっと陵から離れた。
ほんの少し、名残惜しい気もしたけど。
顔をまともに見れないまましばらく俯くことしかできない。
心臓がばくばくと音を立てている。
それだけが妙に頭に響き渡る。
「あっち座る?」
そう言って陵が指したのは改札前にあったベンチだった。

