「ここだよ」
案内してもらった部屋に入ると、すでに海くんがいてギターを取り出していた。
「おせーよ、お前ら」
そう言いながらチューニングをしている。
だけどそんな海くんの姿よりも、わたしはその部屋にまた心を奪われた。
「すごい…」
まるで学校の音楽室のようだ。
部屋はちゃんと防音で、グランドピアノが置いてある。
それだけじゃない。
ドラム、マイク、わたしの半分くらいの大きさのどでかいスピーカー。
ギターもベースも置いてあった。
「ゆ、祐介って何者?」
わたしの問いに少し困ったように祐介が言った。
「何者って…。ただ、親父が音楽の仕事してるから揃ってるだけ」
「すごーい!ちょっとピアノ!ピアノ弾いていい?」
「いいよ」

