空に虹を描くまで



きっと海くんは14時と4時を間違えたんだろう。

息が荒れて呼吸が乱れている。
海くんをじーっと見ていると、頬を伝う汗が見えた。

慌てて走って来たんだろう。

そう思うと笑いがこみ上げて来た。


「…なんだよ」

わたしの視線と笑い声に気づき、海くんが振り返る。

「いや、ちょっと可笑しくって」

ふてくされた海くんの表情を見ると、さらに笑いが止まらない。

「海くんって本当おっちょこちょいだよね」

「はあ?佳奈子に言われなくねえよ。佳奈子も人のこと言えねえからな」

「えー?嘘ー?」

「それに今回はたまたまだよ。偶然!」

”偶然”という言葉を強調しながら海くんは軽く叫んだ。

今度はその言葉に由美が反応する。

「えー?たまたまじゃないでしょ。この前もあったじゃん」

「はあ?ねえよ。そんなこと」

「いや、あった!」

「ねえってば」


その二人のやりとりがまた面白く、しばらく笑いが止まることはなかった。

祐介の家に行くだけで、すでに体力が消耗された。