空に虹を描くまで



『おー、俺。今どこ?』

「駅だよ!」

『あー、悪い悪い。実は俺…あ!』

そう言うと突然電話が切れた。

「え!?もしもし?」

画面を確認すると通話が切れている。

「ど、どうしたの?」

由美が心配そうにこちらに顔を向けた。

「なんか途中で切れちゃって…」

「おーい!」

声のする方向を見ると太陽を背に、一人の人がこちらに向かって走ってきていた。

眩しくて手を目の上に当て、その人の姿を確認しようとした。

「海くん!」
ギターを背負った海くんの姿が見え手を振った。


「もう!遅い!」
由美が海くんに怒りをぶつけていた。

「ごめんごめん。俺なんかわかんねえけど、4時待ち合わせって勘違いしてた」

「はぁー、そんなことだろうと思った。祐介待ってるし早く行こう」

由美はそう言うと重いベースを肩に背負った。