なんだか夢のような時間だった。

陵と一緒に夏祭りに来れるなんて想像もしてなかった。

浴衣も着て、屋台でたくさん遊んで、花火も見て…。


男の子と二人で遊んだことなんて今までなかったから、少し緊張もしたけど。


「ん?」
小さくそう呟いて首をかしげた。

これってもしかしていわゆるデートってこと?


あれ?そもそもデートってどういう意味だっけ?

頭が混乱しつつも、頬が火照ってくるのがわかった。



「何?どうかした?」
わたしが立ち上がったまま進み出さないのを気にして声をかけてくれた。

その言葉に意識を元に戻した。

「あ、ううん。なんでもない」

小走りで陵の元に行った。


「わっ」

履きなれない下駄なんかで走ったせいで、何にもないところにつまづいた。

陵がとっさにわたしを支えてくれたお陰で転ばずにはすんだ。

「…大丈夫?」

「あ、ありがとう」
恥ずかしくて顔を上げることができない。

幸いにも花火ももう上がっていないし、屋台から離れているから表情が読み取れにくいのがゆういつの救いだった。