空に虹を描くまで



「…まじで?」

上から声が聞こえ、顔をあげた。


その人は手の甲で軽く口元を隠し、その姿は戸惑いつつも照れているように見えた。

ただの思い違いかもしれないけど。


それか、もしかすると恥ずかしがり屋なのかもしれない。

下校している人や通りすがりの人もいるのに大声で呼ばれて恥ずかしかったのかも。


いや、恥ずかしがり屋じゃなくてもこんな大勢いるところで大声で叫ばれたら誰だって嫌だろう。


何か言おうと口を開いたとき、ぱっと目が合った。


「あ、えっと…」

いざ喋ろうとすると、緊張してうまく言葉が出てこない。

そんな妙な空気がわたしたちの間に流れた。


だけどその流れを止めるように先に口を開いたのは向こうだった。


「わざわざ探してくれたんだ?」

笑顔でそう言ってきてくれて、自然に緊張感がなくなった。