「佳奈子!」
後ろから声が聞こえた。
夏休みずっと会っていなかったけど、ずっと会いたいと思ってた人の声だ。
声が似ているだけかもしれない。
自分の耳を疑いながら、ゆっくりと振り返った。
8月には似つかわしくない、すごく爽やかな風が流れた。
目の前にはわたしの髪が広がっている。
風が通り過ぎ、視界が晴れると、わたしを呼んだ声の主の姿が目に入った。
「陵…」
目を疑った。
会えるなんて思ってなかったから。
「久しぶり」
低い声でそう言うとわたしに近づいて来た。
「え、なんで!?なんか部活入ってたの?それとも偶然?」
「ははっ、偶然だよ。ちょっと提出しなきゃいけない書類があって。…俺もびっくりしてるとこ」
「そ、そうなんだ」
思わず顔がにやける。
必死に唇をかみしめて、平然を保った。