由美はなんとなく気づいているのかもしれない。
わたしが嘘をついていることを。
家に楽譜を忘れてきたってことを。
行き詰まっているし、何か感想を聞ければイメージが浮かぶかもしれない。
「わかった」
それだけ言うと、わたしはキーボードの前に立った。
「あの、もう一度言うけどこれは…」
「ふふふ、わかってるから。別の曲が家にあるのよね」
由美がわたしの言葉を遮って言った。
「そうそう」
わたしはキーボードの上に手を置き、恐る恐る弾き始めた。
これでも一週間考えて持ってきた曲だ。
自信はないけど、ちゃんと考えた曲。
ほんの一部分しか完成していない曲を弾き終え、顔を上げた。
「こんな感じ…です」

