「それ、もしかして楽譜?」
そう言いながら指で楽譜を指した。
「え、まーうん」
曖昧に小さく返事をしたが、みんなにはバッチリ聞こえていたらしい。
由美や祐介もわたしの手元にあるものに興味を示してきた。
「え、見たい!見せてー!」
由美がわたしの手の中にある楽譜に触れようとした時、わたしはパッと手を上にあげた。
「佳奈…?」
少し不安げにわたしを見てくる由美。
「じ、実は、楽譜を家に忘れちゃって。それに気づいたのが電車に乗ってからだったの!」
思わず口から嘘がこぼれた。
「でも、みんな待ってくれてるだろうしと思って学校に着いてから適当に書いたの!ごめん」
そう言って手を合わせ謝った。
握りしめていたせいか、楽譜はぐしゃぐしゃだ。

