「その...曲作り手伝ってくれない?」
恐る恐る由美が口を開いた。
「いやいや、待って。わたしそんなことできないよ。ムリムリ!」
予想が的中した。
それでもわたしは全力で否定した。
「この前作ってくれたじゃん。あーいう感じの曲が欲しいの!お願い」
両手を合わせて必死に言ってきた。
もともとピアノを弾くのは好きだから、よく適当に弾いて曲を作ったりしていた。
ただ楽譜に収めることはなく、その場の雰囲気で作ったりするだけ。
本格的に曲を作ったのは2回ある。
うち一回はもうだいぶ前。
まだわたしが高校に入る前の話。
だけどこれは完成には至らず途中で放棄をしてしまった。
楽譜ももうないし未完成の曲。どんな曲だったかは覚えていない。
そしてもう一回は即興で作ったバースデーソング。
いや、あれを本格的に作ったとカウントしていいのかは謎だけど。
ーーその日の放課後、わたしは由美たちの部活を覗きに行った。
そしたらその場で、今日は祐介の誕生日だと聞かされた。
プレゼントを全く何も用意していなかったら、祐介からリクエストで何か曲を弾いてと言われた。
部室だからキーボードがあり、コンセントを入れるだけで弾ける状態だった。
せっかく誕生日なんだし、と思って即興で曲を作った。
適当に歌詞もつけて。

