モグラ女の恋

「どうぞ」



「お邪魔しまーす。おう。クロ!!」



玄関のドアを開けると、クロがシッポを振ってお出迎え。



彼は飛びついてくるクロを抱きかかえ、クルっと私のほうを振り返った。



「……あっ、良ければ中のほうへどうぞ」



私は思わずそんな事を口にしていた。



「いいの?じゃあ、遠慮なく」



彼はニッコリと笑い、クロを抱きかかえながらリビングへと足を進める。



私は自分の部屋に男の人がいる奇妙な光景を変な気分で見つめていた。



「思っていた通り綺麗な部屋」



「えっ?」



リビングには入らずに立ち止まっている私に彼がこちらを見ずにそう言った。



「変な意味じゃないよ。ただ、クロを大切にしてくれそうだなって。家の中も綺麗で料理とかも上手なんだろうなって勝手に想像してました」



彼はペコリと頭を下げる。



「大切にしたいとは思ってますけど……仕事があるのでなかなか遊んであげられていません」



アハハ~



私の言葉に彼はひっくり返りそうなくらいの勢いで笑った。



変なことなんて言ってないはずなのに……