そんな私のことは気にも止めずに話を続ける彼。
「俺は工藤 勝(クドウ マサル)。敬語はなしね」
「あっ、はい。穴井 響です」
「だから~敬語なしだって」
「ごめんなさい」
ずっと見つめていた彼にいきなり馴れ馴れしくなんて話し掛けられない。
駅につくと、パッと離れた彼の手に安心した。
「何から話そう。うーんと……今日は無理やり連れてこられて、早く帰りたかったんだ。だから、穴井さんが出て行った後に追いかけるように逃げてきちゃった」
駅のホームで隣に並びながら、私に顔を向けながら話をしてくれる彼。
「大丈夫……なの?」
敬語を使わないようにと考えると言葉が詰まってしまう。
「大丈夫。俺、店に来たときから、あの雨の子だって思ってたんだ。それに職場も一緒なの知ってた?」
「えっ?私は……携帯を見たことがあって知ってました」
彼が私の存在に気付いてくれていたなんて、それだけで嬉しい。


