モグラ女の恋

「それに、間違いじゃなきゃ穴井さんと俺の家は近所だし」



その言葉に私は勢いよく顔をあげた。



「クロ元気?」



「えっ……どうして?」



私の顔なんて覚えているはずがない。



寧ろ、顔が見えなかったから普通に話してくれていたと思っていたのに。



「取り敢えず歩きながら話そう」



「はい」



……って、手が繋がれたままですけど。



私の腕を掴んでいた手は、いつの間にか手のひらを握られている。



ジワジワと吹き出す汗。



離してほしいけど、離してなんて言えない。