モグラ女の恋

子犬を抱えながら家路を歩いている途中、物凄いことに気づいてしまった。



私は今日みたく普通に男の人と話したのはいつ振りだろう?



からかわれるわけではなく、興味本位でもなく、普通の人間として接してくれる男の人と話したのは思い出せないくらい昔のこと……



暗闇と大雨のせいできっと私の顔など見えていなかったんだろうな……



今日がこんなに土砂降りじゃなかったら、あの男は私に声などかけていなかった気がする。



「そうだよね。クロ」



私は抱いているクロに顔を埋めた。



クゥ~ンと返事をしてくれるのがたまらなく可愛い。