こんな私にも好きな人ができた。
容姿が綺麗だったから、好きになったわけじゃない。
彼と初めて会ったのは、大雨が降っていた夜のこと。
仕事帰りに傘を差していても服がべちゃべちゃになるほどの激しい雨の中、私は足早に家へと向かう。
その途中で、小さな子犬を見つけた。
段ボールの中に蹲り、自分の体を自分で温めるように丸まる子犬。
そんな子犬に容赦なく振り続ける雨。
捨てられたんだろうな~と思い、私は子犬に近づいた。
縋るように見つめる子犬を抱き上げ、温めてあげる。
「ウチに来る?」
私の言葉にクゥ~ンと鳴く子犬が無性に愛らしくて私は連れて帰ろうとした。
段ボールから2、3歩離れたその時……
「クロ?あれ?おーい。クロぉ~」
私の背後でクロクロと連呼する男。
もしかして子のこのことかも。
私の腕の中で蹲るその子は日本犬のような顔立ちだけど、真っ黒の毛並み。
飼い主さんだろうか?
私は思い切って声をかけてみた。
「この子犬のことですか?」
すると男は私の腕の辺りに視線を移す。
「そうそう。おークロ。無事だったか?」
「貴方のですか?」
男の言葉にクゥンクゥンと鳴く子犬。
「いやっ。俺のじゃない。さっきたまたま通りかかって……俺の家じゃ飼えないんだけど、どうしても気になったから戻ってきた」
そう言った男の手にはバスタオルや毛布が……


