「でも…………。」


「ん?」



高城さんの視線を辿れば、私と副社長の手元に向いている。


はっと我に返った。いつもの癖で―――。



「ラブラブなんですね、副社長と松井さん。」



料理を二人で分けて食べていた。



「喧嘩してるかと思ったけど?」


「………してた筈なんだけどね?」



今朝の副社長室でのやり取りがあっても、結局は癖でランチを分けて食べていた。



「朱里だけは特別だ。」


「副社長も言いますね?それって誰にでもですか?」


「高城、伊藤と入れ替えて、賢人の直下にするぞ?社長秘書は更に忙しいからな?」


「副社長、冗談でも笑えないです。」


「朱里が怒るから、冗談でも女の話はするな。」


「松井さんもヤキモチ妬くんだね?」



高城さんの言葉に動きを止めた。


私がヤキモチ?



「気付いてないのは朱里だけだ。」


勝ち誇ったような副社長の声に私は完璧に考え込んだ。



ヤキモチを妬いてる?



「松井さん、女の話で怒るって事はヤキモチでしょ。」



笑う高城さんに頬が染まっていく。



そうなのかな?



知らされた真実にチラリと副社長を見れば、ニヤニヤと私を見下ろしていた。


全員のランチを奢っても上機嫌な副社長に、よっぽど嬉しかったんだと確信した。