前で肩を抱き寄せる賢人を見上げる真央の横顔は幸せそうだ。



「俺様なだけかと思ってた。」


「尚輝は俺よりも女への想いが浅いな。」


「賢人………、俺も負けてない。」



隣の尚輝が低い声で賢人を威嚇した。それでも私は賢人に同意だ。


それほど愛されてない気がしてきた。


付き合うまでは尚輝の本気が本物だと伝わる行動が沢山あった。


だけど―――賢人と真央に比べれば、私達の愛は浅い感じがする。


賢人の真央への束縛、それに応える真央。重すぎる筈の愛も嬉しそうに応えている。


ふと元彼が頭を過った。私への執着が強すぎて、私達は壊れていった。


そこまで元彼を愛してはいなかったんだと確信もした。


前に座る賢人の執着も激しいが、壊れるどころか幸せに見える。



「朱里?」



聞こえてきた尚輝の声は弱々しい。だけど尚輝に背を向けて窓の流れる景色を見つめる。



私と尚輝の愛は本物?


実は今だけ盛り上がってる?