落ち着いた声の佐伯課長に、真央が完璧に動きが止まったままだ。


間違いなく高城さんのメールの件だ。



「佐伯課長、伊藤さんと給湯室の掃除を先に宜しいですか?」



思わず、二人の間に割り込んでしまった。真央が困惑しているのが分かったから。


佐伯課長の冷たい瞳に息を飲み込み、同じ言葉を伝える。



「給湯室の掃除がまだなので。伊藤さんを先にお借りしても宜しいですか?」


「…………伊藤さん、終わったら来るように。」



佐伯課長は秘書課のトップだ。下手に揉めたくないのは分かっていた。


真央へと視線を向けた。



「伊藤さん、手伝ってくれる?」



大きく頷く真央と給湯室へと向かった。



「真央、大丈夫?佐伯課長と上手くいってないの?」


「………大丈夫。いつもの事だから。」


「いつもの事って………。無理して参加しなくて大丈夫だよ?」


「そしたら朱里も行けないでしょ?高城さんにも悪いし。」



自分の事より他の人を気遣う真央を見つめた。