副社長が席に座ると、一言声を掛けて給湯室に戻る。


真央がコーヒーをカップに配り終わる所だった。



「真央、ありがとう。」


「ううん。後は宜しく。」


「うん。」



役員が集まる会議室の机に、次々とカップを置いていく。


配り終えた私は会議室を後にした。



「松井さん、片付けもお願いします。」


「はい。」



廊下ですれ違う際、佐伯課長に声を掛けられた。佐伯課長はそのまま社長と一緒に会議室に入っていく。


その背中を見送る。



『丸め込まれちゃうんだよね。』



真央の言葉に大きく頷いた。確かに佐伯課長は有無を言わせない雰囲気が漂っている。


それは副社長も同じだ。


でも―――私と尚輝は言いたい事を言う関係。


なら―――真央は?窮屈じゃない?



「真央は幸せなの?」



そんな呟きが誰もいない廊下に小さく吐き出された。


私は大きく深呼吸をし、秘書課へと歩みを進めた。