コーヒーを副社長のデスクに置いた。



「では役員会議の時間に参ります。」


「頼む。」



資料を片手に挨拶する副社長にお辞儀をして、秘書課へと戻った。


自分の席に積み上げられた資料に溜め息を吐いた。


副社長の事は言えない。自分も溜め息が漏れてしまう。


暫く集中していたが――――



「松井さん、10時からの役員会議のコーヒーをお願いします。」


「はい。」



佐伯課長に頼まれ、集中力が一気に切れた。


席を立ち上がり、給湯室で人数分のコーヒーカップを用意する。



「朱里、手伝うよ?」


「ありがとう、真央。」


「久し振りの出勤は大変だね。今日は残業確定。」


「私もだよ。副社長なんてデスクの資料を見て固まってたから。」



クスリと笑えば、真央も同じように笑う。



「朱里は知らないだろうけど、賢人も出社して机の上を見た瞬間、固まってたから。」


「一緒だったの?」


「まあ。」



真央が僅かにハニカミながら頷いた。