賢人の言葉に背後から思いっきり引き寄せられ、シートに体が押し付けられた。



「ちょっと尚輝。」


「好み?朱里の好みは俺だよな?」


「…………。」


「違う訳?」


「…………。」



尚輝が私から離れていく姿にホッと息を吐いたが――――。


太股に触れる尚輝の手にビクリとした。


視線を太股から尚輝の顔に向ければ、知らん顔で私の太股を撫でている。



「尚輝?」


「ん?何?」


「ちょっと。」



それでも手を退かさない尚輝の手を掴むが、尚輝の力には敵わない。


尚輝の顔が近づき、小声で囁かれた。



「あんまり声を出すと皆が見るけど?」


「………。」



クスクスと笑う尚輝から離れようとするが、今度は肩を強く抱かれて離れられない。


太股を撫でる手を掴み、今度は私が尚輝の耳元で囁く。



「変な事するなら、尚輝とは寝ないから。」


「………。」


「一人で寝れば?」


「…………。」



二人で顔を寄せ合い、言い合いをしていれば――――。