俺様副社長の溺愛秘書

低い声で聞いてくる尚輝をチラリと見て、視線を直ぐに逸らす。



「忘れられない存在だったのは事実。でも2度と会わない人だと思ってたから。」


「俺は朱里だけを想ってた。好きになったのは朱里だけだ。」


「…………でも彼女いたんでしょ?」


「彼女じゃない。」


「女はいたんでしょ?」


「…………男の事情だ。」


「なら、私も女の事情。」



お互いに一歩も引かない私達の話を皆が静かに聞いている。



「女の事情?」


「そっ、女の事情。いつも一緒にいてくれた人が『好き』って言ってくれれば、付き合ってみようって思うの。」


「誰でもいいのかよ。好きでもないのにか?」


「尚輝と付き合う時も、初めての彼氏で付き合ってみようって思ったから。」


「…………。」


「そこから好きになった。それでは駄目なの?」


「………。」



尚輝の沈黙に車内にも沈黙が流れる。