「尚輝?」


「………ッ…………。」



唇を噛み締め、煙草を見据えたままの尚輝の表情は今にも涙が溢れそうだ。


私は尚輝から煙草を取り上げると、目の前に置かれた灰皿で揉み消した。



「軽蔑とかじゃない。ただ………。」


「…………。」


「賢人さんと真央を見てると、私達の愛は本物なのかな?って疑問が浮かび上がったの。」



ベンチの背凭れに凭れ掛かり、青く広がる空を見上げた。



「賢人さんは一途に一人の女を愛してた。だけど他の3人は遊び人だった。」


「悪かった。」


「私も尚輝を責められない。だって尚輝と別れてから別の人を好きになってたから。」


「………。」


「だから私達の愛は本物なのかな?って。」



空を見上げていた目をそっと閉じる。夏の暑い日差しが顔に照りつける。



「あの二人のように一途に一人を好きでいた訳じゃない。それって本物の愛なのかな?」



私の呟きに尚輝は答えない。