社長室から副社長と二人、廊下へと出た。


副社長室へと向かう背中を追って、私も歩きだした。



「朱里、今回は朱里のミスだ。」


「………わかってます。」


「引っ越しを早めるか?」


「無理です。来週は出張もありますし、片付けが間に合いません。」


「手伝う。」



副社長室の前へと到着し、副社長が足を止めた。


私も足を止めて副社長を見上げた。



「朱里、婚約発表するが大丈夫か?」


「はい。」


「後には引けなくなる。まあ逃がさないけど。」


「それはお互い様です。」



副社長と目と目が合う。



「ここ廊下。」


「賢人………。」



佐伯課長の声に尚輝から視線を外した。副社長が部屋へと入る姿を見送る。


隣に立った佐伯課長を見上げた。



「尚輝を幸せにしてやってくれ。」


「はい。」



佐伯課長の優しい声色に大きく頷いた。