「副社長、本日の予定ですが………。」


「朱里、指輪は?」



低い声の副社長に視線を向けた。



「大切な指輪なので、家に置いてきました。」


「嵌めろ。」


「目立ちますので。」


「だから嵌めておけ。」


「なら尚輝も指輪する?」



しつこい尚輝に口調が変わってしまった。ニヤリとする尚輝に口を噤んだ。



「朱里、秘書らしからぬ口調だ。」


「失礼しました。」


「指輪、ちゃんと嵌めろ。」


「だから何度も………。」


「俺も何度も言う。」



尚輝の目を見つめたまま、お互いが視線を外さない。



「朱里の希望なら俺も指輪を嵌めるか?」


「………。」


「さらに噂が広まる。」


「………。」


「どうする?」



尚輝に追い詰められていく。私は尚輝から視線を外し、本日のスケジュールを伝える。


クスリと笑う声に、勝ち誇った尚輝の顔がちらつく。